スマートコントラクト(Smart contract)を直訳すると賢い(=smart)契約(=contract)という意味になります。スマートという言葉は、ここではコンピュータにより制御された「自動化」と考えるのが分かりやすいです。つまりスマートコントラクトとは契約の自動化(自動実行される契約)といえます。
スマートコントラクトの考え自体はビットコインよりも古く、1990年代にNick Szaboという法学者・暗号学者によって最初に提唱されました。Szaboはスマートコントラクトを最もはじめに導入した例として、自動販売機を挙げています。つまり、「利用者が必要な金額を投入する」、「特定の飲料のボタンを押す」の二つの契約条件が満たされた場合にのみ、自動的に「特定の飲料を利用者に提供する」という契約が実行されることになります。このように、ここでいう契約とは書面上で作成された契約のみをさすのではなく、取引行動全般をさします。
また未来の実装例として、レンタカーの例が挙げられています。レンタカー用の鍵に次のようなプログラムが組み込まれているとします。例えば「1,000円投入するごとに1時間動作する」というプログラムです。これにより、例えば3,000円分を支払ったとき、3時間経過した後は自動的に車の鍵がロックされることになります。自動車の自動走行の技術と組み合わせれば、一定時間を経過した後は自動的に道路の脇などに停車し、強制的に運転できなくするということになるかもしれません。
その他として、通信販売において商品が到着した際に自動的に代金が支払われる仕組み等も考えられます。
このようなあらゆる契約行動をプログラム化し、自動的に実行しようとするものがスマートコントラクトです。
契約の自動化による利点は、ビットコインと同様に、契約の相手方を信用する必要がなくなること、コストが大きく低下すること、の二つが主に考えられます。
一つ目の契約の相手方を信頼する必要がなくなるというのは、契約がプログラム化され機械的に実行されるため、その実行中においては詐欺をする余地が極端に少なくなるということを意味します。また、ブロックチェーン技術により過去の契約の実行履歴がすべて記録・公開されているという透明性もあります。
二つ目のコストの低下は、主に第三者機関を必要としないことからきています。従来では契約が確実に履行されるためにエスクロー(商品の注文後、買い手は第三者に料金を渡し、商品が買い手に到着した後、第三者は売り手に料金を渡す)のようなサービスがありましたが、スマートコントラクトでは自動的にエスクロー機能が実現されることになります。その他不正を防ぐために紙の契約文書を作成する必要もなくなりますし、契約に関する訴訟も大幅に減ることが考えられます。
DAOを直訳すると「分散型自動化組織」、つまり組織・会社の分散化、自動・自律化を意味します。DAOは見方を変えればスマートコントラクトの集合、あるいはスマートコントラクトをより長期・永続的に行うものと言えます。
DAOとして最初に有名になったのは、Ethereumブロックチェーン上に構築された2016年に始まった「The DAO」です。The DAOは分散型投資ファンドと呼ばれ、投資先の選定をThe DAOの参加者が持つDAOトークンを利用した投票によって決め、その利益を参加者に分配するという構造でした。しかしThe DAOはスマートコントラクトのコードの脆弱性を突かれ、システムにプールされていた資金(ETH)を盗み出されたことにより、同年破綻しました。
このようにスマートコントラクトはプログラムコードによって構成されているので、当然ながらコード自体に不具合・脆弱性が含まれているリスクがあります。特に通常のコードと違ってブロックチェーンに乗せる分、透明性・永続性は攻撃者にとって逆に都合が良いため、一つの脆弱性がより致命的な結果に繋がりかねない点は注意が必要です。
世界で最初のDAOはビットコインという考えもあります。通常の組織・企業が提供する製品・サービスはビットコインによる決済、収入はビットコインの取引手数料、支出は採掘者に支払われるビットコイン、株式はビットコイン自体、社員は採掘者、給料はビットコイン、顧客はビットコインの利用者、その他として有効なブロックチェーンには50%以上の採掘力が必要という投票システム(株主ではなく社員が投票権をもつという仕組み)など、従来の組織が持っている要素にそれぞれ対応しています。
このような考えでは、ほとんどすべての仮想通貨プロジェクトは(広義の)DAOであると見なすことも可能です。プロジェクトの中でもDAOであることを特に掲げているものは、組織運営の自律化を強調しており、The DAOであったような投票機能をもつ仮想通貨(トークン)を持っていることが多いです。このようなトークンはガバナンストークンと呼ばれ、保有量に応じたプロジェクトの意思決定に関する投票権を基本として、配当をもらえる場合もあります。
DAppsは分散型アプリケーションと訳され、特にブロックチェーンを使ったスマートコントラクトにより構成されているアプリケーションのことを指します。ブロックチェーン単位というよりも機能・役割に着目して仮想通貨プロジェクトを見る概念と言えます。
投票・保険・ゲーム・オークション・ギャンブル・SNSなどあらゆる分野のアプリケーションのDApps化が試みられていますが、特に金融分野のDAppsはDeFi、ゲーム分野はGameFi(またはブロックチェーンゲーム)などと呼ばれています。
分散型金融と訳すことができ、DAppsの中でも特に金融に関するものがDeFiと呼ばれます。ビットコインも通貨・決済手段という側面でDeFiの一つと考えられ、また仮想通貨・ブロックチェーン自体が深く金融と関わっているため、DAppsとほぼ同義で使われることもあります。
※一つのDeFiは複数のDAppsから構成されているという見方もでき、DAppsとDeFiの定義は曖昧でありどちらが上位概念となるかも文脈等によって異なります。
代表的なDeFiには次のようなものがあります。
分散型取引所とは、従来の中央集権的な取引所(CEX / Centralized Exchange)とは違い、P2P方式で取引を行うプラットフォームです。単純なP2Pで取引を行うものの他に、流動性確保のためプール資金を溜めそこから自動的に取引を成立させる仕組みのものもあります。分散型取引所には以下のような利点が考えられます。
一つ目はセキュリティ面です。2014年2月に従来型の取引所であったMt.Goxから顧客のビットコインが消失し、閉鎖に追い込まれました。これは当初ハッカーによる攻撃を取引所が受けたためといわれましたが、取引所をP2P化することによりウォレットから取引所に直接接続できるため、顧客資産を盗むためには基本的に個人のコンピュータから盗み出さなければなりません。その他にも従来型の取引所と違って管理者不在のため、内部犯が顧客の通貨を盗む危険性もありません。このことから、盗難により個人の資産を失う可能性は従来型の取引所よりも大幅に少ないと言えます。
二つ目はコスト面です。理論的には取引所をP2P化することで、取引所へ手数料を払わなくて済む分だけより低コストになると考えられます。また社会全体としてみれば、取引所が不要になる分、それを監視・審査するような仕事・機関を維持するコストがなくなることも考えられます。
しかし、分散型取引所は管理者不在のため取引状況の監視が難しくなる分、よりマネーロンダリングの手段となりやすいという欠点も存在します。その他、セキュリティ面で見るとThe DAOで見られたようなプログラムコードに脆弱性が含まれているリスクも存在します。
ブロックチェーン上のプラットフォームでは、当然デジタルデータの取引しかできず、例えば現実のお札とビットコインをブロックチェーン上で交換することは物理的に不可能です。そこで産み出されたのが、ステーブルコインと呼ばれる1コイン=1ドルのように常に現実の資産と同じ価値を持つ仮想通貨です。
ステーブルコインはドル・円・ユーロなどの法定通貨に連動するものが主流ですが、その他にも金・原油などの商品価格と連動するステーブルコイン、あるいはビットコインなどの仮想通貨の価格と連動するステーブルコインなども存在します。
これらのステーブルコインを利用することで、仮に同じブロックチェーン上の仮想通貨同士でなくても、例えば分散型取引所でBTC/USDの取引ペアやBTC/ETHの取引ペアなどを成立させることが可能になります。
ステーブルコインと現物の価格を一致させる仕組みには、実際に裏付け資産を用意したり、アルゴリズムで自動的に価格を保つものなど様々な方法があります。ステーブルコインは現物と完全に同一ではありません。これらの裏付け資産がなくなってしまったりシステムが破綻すると、価格の固定(ペグ)が崩壊し価値が大きく変動するリスクがあることには注意が必要です。
(分散型)レンディングとはブロックチェーン上でP2P方式で資産の貸し借りを行える融資プラットフォームです。貸主はシステムに資産を貸し出すことで金利を得ることができ、借主は何らかの担保をシステムに預けることによって資産を借りることができます。
ブロックチェーンやスマートコントラクトの透明性・自律性により、融資の条件が明確で透明な点、事前審査が必要なく誰でも公平・迅速・簡単に借入ができる点、個人でも簡単に貸主になり金利を稼げる点、などがメリットと言えます。
融資においては、従来型のシステムと同様に借主が返済できなかった場合のリスクをいかに解消・対処するかが重要です。分散型レンディングでは、借主が入れた担保以上に借りることができない仕組みや、即時に返済することを条件に無担保で借入ができる仕組み(フラッシュローン)が導入されています。現状では、審査さえ通れば担保なしでも一定期間借りられる従来型のシステムに比べて、これらの仕組みは柔軟性・利便性については損なわれている課題があります。また、フラッシュローンのシステムを悪用した攻撃・盗難が実際に何度も行われており、コードの脆弱性やシステム設計自体の欠陥の可能性から安定性をはっきりと保証できない問題もあります。
最終更新日: 2023年02月11日
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