独自トークンとNFT ~ 個人・団体による自由な通貨発行と所有権のデジタル化

独自トークン(Token)

独自トークンとは個人・団体でだれでも通貨・コインを発行できるということを意味します。コインは特定のブロックチェーン上で誰でも簡単に発行することができ、実際に発行されたものは単にトークンと呼ばれることが多いです。これには大きく三つの利点があります。

一つ目は、新たな資金調達の方法になるということです。初期に資金調達が行われた最も有名な例は、2014年に基軸通貨のETHが先行販売されたEthereumプロジェクトで、1800万ドル(約18億円)の資金調達が行われました。従来の資金調達と異なるのは、誰でも簡単に少額であってもプロジェクトに投資できる点、投資により得られたコインは将来のプロジェクトで利用できる点、コインは取引所で交換できるため換金していつでも投資を「キャンセル」または購入して途中から参加できるという点、資金調達を募る側としては仲介者がいないため迅速に資金調達ができる点、などが考えられます。

二つ目は、あらゆる資産を仮想通貨で表現することでどんな資産でも迅速に交換できるようになることです。これは「独自」トークンに限らず、例えば日本円を表す仮想通貨であったり、小麦を表す仮想通貨であったり、債券を表す仮想通貨かもしれません。あらゆるものを「トークン(コイン)」として表現することで即時にどんなものでも交換が可能となります。実際の商品がお互いの手元に到着するにはタイムラグがどうしても発生してしまいますが、あらゆる価値を瞬時に交換できるという点で未来の究極の物々交換のかたちといってもいいかもしれません。

三つめは、プログラムを自由に乗せられるということです。ブロックチェーン上で運用することでプログラムコード(スマートコントラクト)を組み込むことができるので、例えばトークンの移動・取引にロイヤリティを設定して手数料を発行者が受け取れるようにしたり、特定の条件でトークンの性質を変化させたり、アイディア次第であらゆることに応用できるトークンを作成することが可能です。

独自トークンにはその性質上発行者・管理者が存在する場合が多く、ビットコインなどの仮想通貨が持っている特徴・メリットが失われている可能性がある点には注意が必要です。

トークンとは?カレンシー(Currency、通貨)とアセット(Asset、資産)について

カレンシーとアセットという概念があります。元々の意味としては、アセットは資産、つまり価値あるものすべてを指すと考えられ、カレンシーはアセットの中でも特に交換の媒体(medium of exchange)となるもの、つまり日本円やドル、ビットコインなどそれ自体には価値のないものと考えられます。

一般的に、ブロックチェーン上のデジタルデータとして表されたアセットのことを仮想通貨業界ではトークンと呼びます。カレンシーもトークンに含まれますが、特にブロックチェーンの基軸通貨(カレンシー)のことはネイティブトークンと呼ばれます。

ICO(Initial Coin Offering)

トークンによる資金調達は既存のIPO(Initial Public Offering、新規株式公開)になぞらえてICO(Initial Coin Offering)と呼ばれます。2013年から2015年にかけての黎明期では、先ほどのEthereumのように新たに立ち上げるブロックチェーンのコインを販売するものが中心でしたが、Ethereumをはじめとするトークン発行プラットフォームが確立されたことで誰でもトークン発行ができるようになりそのハードルは下がりました。しかし、誰でも簡単にできる分、資金調達後にプロジェクトを開始することなく資産を持ち去ったり、あるいはプロジェクトがすぐに頓挫するなど、運営・開発体制が極めてずさんなものや明らかな詐欺が2017年・2018年を中心に急増し横行しました。

ICOは多くの国で法規制を受けないため、投資者側もそのまま損失を被るしかない問題がありました。そこで、STO(Security Token Offering)というICOに代わる、あるいはICOの新形態である資金調達の概念も登場しました。

STOのSecurityには「安全」だけではなく「有価証券」という意味があります。つまり、法律上の有価証券あたる資産をトークン化(セキュリティトークンと呼ばれる)し、それを資金調達の手段とするものです。セキュリティトークンは各国ごとの法規制を受けるため、従来のICOと比べ安全性・信頼性は優れていますが、その分新興企業が資金調達を行うことが難しくなってしまったという課題もあります。

その他取引所を仲介してICOを行うIEO(Initial Exchange Offering)という用語もあります。

NFT(Non-Fungible Token) ~ 所有権のデジタル化

NFTとはNon-Fungible Tokenの略で非代替性トークンと訳されます。NFTはその名の通り代替することができないトークンであり、ビットコインをはじめとする既存の代替できる仮想通貨(FT、Fungible Token / 代替性トークン)とは異なるトークンとして登場しました。現状の日本の法制度においては、ほとんどのNFTはいわゆる暗号資産には該当しないとの意見が支配的であり、NFTを暗号資産・仮想通貨と呼ぶことは通常ありません。

代替できるということは区別されないということです。FTの例としてビットコインがあります。Aさんが持つ1BTCとBさんが持つ1BTCは完全に同一なものであり、区別することはできません。対するNFTの例として絵があります。誰かがその時に書いた絵は世界にただ一つしかなく、同じ人が同じように書いた仮に同じ価値の絵であっても細かい差異があって区別することができます。

FTは分割することが出来るが、NFTは分割することが出来ないという特徴もあります。1BTCは0.5BTCや0.0001BTCなどに分割でき価値もそれに連動しますが、絵は分割できませんし仮に無理やり破って分割したら価値は大きく下がることになります。

NFTという言葉が有名になったのは、2017年に登場したゲーム上の猫を育成・交配・収集・販売するCryptoKittiesというブロックチェーンゲームです。ゲーム上のアイテムである猫は世界にただ一つのNFTであり、その珍しさに価値を感じた人によって高値で取引されるようになりました。その後、2020年から2021年にかけてデジタルアート(絵)をNFTとして販売するNFTアートが高値で取引されるようになりバブル的に盛り上がりました。

NFTは「所有権」のトークン化

ゲーム内アイテムに始まってデジタルアートを中心にNFTは大きく盛り上がりましたが、NFTの対象はデジタルデータにとどまらず実物の絵や保険証書・不動産など現実の資産にも適用されています。このようにNFTはデータでも現物でも対象の所有権をデジタル化・トークン化したものと言えます。

多くの場合、実はNFTアートでも絵のデータ自体がブロックチェーンに記録されているわけではなく、とあるデジタルアートを所有しているという文字列が記録されているに過ぎません。ブロックチェーンには絵のリンク先が記載されているだけです。これはNFTの特性を理解するうえで非常に重要です。

例えば、実際の絵のデータは分散型サーバーにしても特定の誰かが管理するサーバーにしても、ブロックチェーンではない別の場所に保管されていることが多いです。このため、簡単に複製はできますし、サーバー上からデータが消えれば、所有権だけ残って肝心のデータ自体は存在しないという事態にもなります。ゲーム内アイテムがNFTであっても、そのゲームがサービス終了すれば(誰かがデータを保管しつづけない限り)そのNFTも実質的に消えるということになります。複製不可で永続性を持つのはあくまで所有権のみで元データではない点を間違えないようにしましょう。

※ブロックチェーン上に元データも載せることで、ブロックチェーンが続く限りは複製不可であり永続性も担保されるフルオンチェーンNFTと呼ばれるものもあります。ただし、ブロックチェーンに乗せられるデータのサイズ上限の関係上、サイズが小さいものが中心であり、上限ギリギリのファイルはブロックチェーンの処理能力を圧迫しネットワーク上の手数料が高くなってしまう問題もあります。また、NFTと結びついている不動産のような実物をブロックチェーンに乗せることは物理的に不可能です。

また、これまで「所有権」という言葉を使ってきましたが、これはあくまで一般用語としての所有であり法律上の「所有権」が担保されているわけではありませんし、著作権が譲渡されるわけでもありません。NFTに関してはまだまだ法整備が追い付いておらず、あくまでも対象物を「所有」している感じがするという、曖昧でしかない点にも留意しておく必要があります。

SFT(Semi-Fungible Token)

NFTは従来のFT(仮想通貨)とふつう明確に区別されますが、中にはNFTから派生したNFTとFTの中間の特性をもつSFT(Semi-Fungible Token)という概念もあります。

SFTの代表的な例はゲーム内アイテムです。例えばキャラクターが生まれてくる「卵」はSFTの一種です。孵化前の卵は外見上全く変わりなく全く同じ価格で交換も可能なFTと言えます。しかし、孵化した後は外見やステータスが異なる世界に一つしかない価値も異なるNFTに変化します。このようにNFTに変化できるFT的なトークンはSFTと呼ばれます。

また別の例として硬貨があります。デジタル上の硬貨として「1円玉」「50円玉」「50セント硬貨」を実装するとします。硬貨の種類が同じであれば、FTのように50円玉と1円玉を足し算して「51円」とデータを扱うことができ、1円玉が50枚あれば50円玉1枚と同じ価値(=代替可能)と見なせます。一方で、硬貨の種類が違う「1円」と「50セント」はNFTと同じように足し算できませんし、1円玉を50枚集めても50セント硬貨と同じ価値とは言えません。このように単純にNFTとFTの両方の特性を持ったものもSFTの一種です。

SFTは、NFTと違ってデータをまとめて作成・送信できるため、ネットワーク上の手数料が安く済むというメリットがあります。

最終更新日: 2023年02月17日

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