ビットコインは「分散型仮想通貨」と呼ばれますが、一体ビットコインとは何なのでしょうか?技術的な仕組みを見る前に、まずは通貨として、決済手段としてのビットコインの特徴をそれぞれ見ていきましょう。
特徴 | ビットコイン | 法定通貨 円・ドルなど |
金 |
---|---|---|---|
発行主体 | なし ※プログラムで規定 |
中央銀行・政府 | なし ※地球上に埋蔵 |
発行量 | 有限 | 無限 | 有限 |
価格変動 | 高 | 低 | 高 |
携帯性 | 高 | 高 | 低 |
偽造 | 困難 | 可能 | 可能 |
ビットコインは通貨ではない、と主張する人もいますが、「仮想通貨」と呼ばれている通り通貨としての機能の一部を備えていることは事実です。また、日本の法律上は「暗号資産」と呼ばれており、通貨ではなく金などのコモディティ(商品)に近いとする見方も多いので、ここでは金についても比較を行っています。
ビットコインの最大の特徴は世界初の発行主体がいない分散型通貨である、ということです。詳細については、技術的な仕組みを参照する必要がありますが、分散(P2P)型であるということは、基本的に外部から管理・影響されにくい通貨であるということです。特に、国の体制が不安定であったり法定通貨に対する信用が低いような国では、その国の通貨がいつ紙くずになってしまうかわからないリスクが存在しています。また、法定通貨というのは現金だけではなく、銀行預金や企業が発行するポイントというかたちで存在していることもあります。この場合には、銀行や企業が破綻するだけで、管理する資産が一部あるいはすべてが失われるリスクがあります。しかし、ビットコインの場合は、個人で保管している限りこのようなリスクが一切存在せず、なおかつそのまま世界中に送金することが可能となっています。
しかし、発行主体がいないということは、その価値を担保する組織が存在しないということでもあります。これはつまり、もし手持ちのビットコインを何らかの原因で失ったときに補償される可能性が低く、基本的に完全に自己責任になることを意味しています。そのため、円に対する信頼度が高い日本においては「分散型」という点においてはあまりメリットはないと言えるかもしれません。
※単位:万BTC、2022年5月以前は実測/2023年5月以降は予測
法定通貨は中央銀行や政府が自由に発行量を調節できますが、ソフトウェアでもあるビットコインの場合は、既にプログラム内のコードによって発行上限が2,100万BTCと決められています(BTCはビットコインの通貨単位)。上グラフのとおり、発行スピードも決められています。最初は約10分毎に50BTCが発行され、さらに約4年ごとにその発行量が半減され(半減される日付を半減期と呼ぶ)、最終的に2140年には2,100万BTCになりビットコインの発行が終了する予定になっています(厳密にはビットコインの利用者のネットワークへの参加状況などにより発行スピードが決定されるため、実際にはこれよりもやや早いペースで発行が進んでいます。)。
上限があるというのは、金でも同様であり、ビットコインは金とよく似ていると言われるゆえんの一つでもあります。
なお、この発行量はあくまでもプログラム内のコードで決められているだけで、コードによって自由に変えられるものなので、分散型通貨の特徴ではなくビットコイン固有の特徴と言えます。
法定通貨には為替変動リスクがあるものの、日本で生活している限り極端な物価変動はほとんどなく、日本円の価格変動は小さいといえます。
対してビットコインは非常に価格が変動しやすいというリスクが存在しています。そしてこれがビットコインが通貨ではないと言われる最大の理由の一つです。一般的に、通貨(貨幣)の要件には(1)交換手段(2)価値尺度(商品そのものの価格をその通貨で表せる)(3)価値貯蔵の三要素がありますが、ビットコインの価値は大きく変動するため、貨幣としての3番目の機能が十分でないと言われることがあります。
実際にはこの価格変動の大きさを逆にメリットと感じ、通貨としてというよりも投資・投機手段としてビットコインを利用する人が多いです。
これは主に金と比較したものです。金そのものを商品の交換の媒体とすることは、物理的に交換するしかなく非常に不便であり現実的でありません。しかし、ビットコインの場合は電子データであるため、一瞬で世界中に送付することが可能となっています。利便性という意味では、現代において通貨としてビットコインと金そのものを比較した場合、ビットコインのほうが通貨としての優れた機能(交換手段)を持っているでしょう。
通貨としての重要な要素の一つでありビットコインの最大の特徴でもあります。これまで、2009年のビットコインの登場以前に分散型通貨が存在しなかったのは、偽造という問題を解決できなかったためでした。ビットコインでは暗号技術を使うことにより偽造を困難にしており、実際に現在でも偽造が行われたという例は報告されていません(ただし、これはビットコインのセキュリティが未だに破られていないためであり、今後も未来永劫破られない保証はない、という指摘もあります。)。
それに対して、法定通貨の偽造事件は非常に長い歴史がありますし、金についてもメッキなどによる偽造が日常的に行われていると考えられています。
特徴 | ビットコイン | 現金 | 銀行振込 | クレジットカード |
---|---|---|---|---|
送金者 | 個人 | 個人 | 銀行 | カード会社 |
手数料(国内) | 数円から数百円 | なし | 数百円程度 | なし ※店舗側が数%負担 |
手数料(海外) | 数円から数百円 | - | 数千円程度 | 数% |
送金時間 | 即時 ※送金確定は約10分~ |
即時 | 即時 | 即時 ※実際の送金は後日 |
送金可能時間 | 常時可能 | 常時可能 | 営業時間内 | 常時可能 |
個人間送金 | 可能 | 可能 | 可能 | 不可 |
匿名性 | 中程度 | 高 | 低 | 低 |
ビットコインは通貨としてよりも、むしろ決済手段としての有用だと主張する人もいます。ここでは、代表的な決済手段である現金・銀行振込・クレジットカードをビットコインと比較しています。一見すると現金が最も優れていると言えますが、物理的な手段で渡すしかなく非常に不便であるため、利用は限定的です。
ビットコインの送金手数料はネットワークの混雑状況などによって変化します。空いているときは数円程度から、混んでいるときは数百円以上かかります。国内送金に限定すれば他の決済手段と比較して決して手数料が安いとは言えませんが、海外送金の手段としては、著しくネットワークが混雑していて必要手数料が高騰している状況でなければ、他の決済手段よりも優れています。
ビットコインについては新しい技術などが開発中であり、今後実用化・普及が進めば毎回数円以内に送金が完了することが期待されています。
基本的にどの決済方法でも即時に決済が行われるため差はありませんが、銀行振込の場合は、平日の営業時間内でしか振込が行われないため不便です(ただし、銀行振込も振込方法によっては営業時間外でも即時反映されるようになってきています。)。また、事業者側から見るとクレジットカードは実際の入金が後日になるのに対して、ビットコインでは入金が素早く行われます。
ビットコインでは送金したという情報は即時伝達されますが、実際の決済には約10分以上かかるといわれることがあります。これはビットコインの仕組み上、最低約10分以上経たないと、主に支払者側が支払ったことを偽造するリスクが存在するためです。このため、事業者側が未払いリスクを避けるため、多くのビットコイン決済では約10分~1時間程度決済完了にかかることがあります。通常の店頭の商品購入などでは不便であるため、即時決済できるところもあります(少額の決済の場合は偽造コストが支払額に見合わないと考えられるため、即時決済を導入する店があります。また、ビットコイン決済の導入には第三者的な決済サービスを利用する場合が多く、そのような決済サービスの一環として即時決済が提供されていることもあります。)。
こちらも同様に新技術が開発中であり、今後10分待たずに即時決済できるようになることが期待されています。
クレジットカードは優れた決済手段であり、そのためビットコインが不要と考える人も多いですが、カードの場合個人間送金はできません。ビットコインはクレジットカード並の利便性を備えていながら、個人間送金が可能というのが非常に大きな強みです。
最近はスマホ決済による個人間送金も便利になっていますが、主に日本国内での利用に限定されます。ビットコインは海外であっても簡単に個人に送金できるため、インターネット上の寄付手段としても広く用いられています。
銀行やクレジットカードを利用するには、本名や住所などの個人情報を登録することが必要ですが、ビットコインの場合は個人情報を一切登録することなく、自分の口座を持つことが可能な仕組みです。このため、ビットコインには匿名性があると言われることがあります。
ただし、実際にはビットコインの送金・取引情報は全世界に公開されているため、本名・住所等はわからないものの「ビットコイン口座Aからビットコイン口座Bに10BTC送金した」という情報は、全世界の誰でも入手することが可能です。銀行やクレジットカードは一部の人にしか取引情報が公開されていないという点で、ビットコインはより透明であり、匿名性がないと言うこともできます。
さらに言えば、現実にはすべてのビットコインと日本円の国内交換所では本人確認が義務付けられており、その交換所を通じてビットコインの口座と個人情報を結び付けることができます。ビットコインは匿名性が高いため犯罪に使われるリスクが高いとの指摘もありますが、交換所での本人確認が徹底されれば、現金よりはよっぽど匿名性が低いと言えるでしょう。
プライバシーが気になるという人は、ビットコインの口座(アドレスと呼ぶ)はいくらでも無数に自由に作成できるため、多くのアドレスを使い分けることで、プライバシーを保護することが可能です(個人の一般ユーザーによって調査・特定されるリスクを下げることができます。)。
最終更新日: 2023年03月04日
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