ビットコインとは何か? 第5回:ビットコインの問題点とこれからの未来

※本ページは第2回~第4回で説明してきたようなビットコインの仕組みをある程度理解していることを前提に書かれています。

ビットコインの問題点

ビットコインには従来の通貨・決済手段では見られなかった多くのメリットがありますが、まだまだ多くの問題もあります。

価格変動リスク

国などから価値が担保されてないビットコインは利用者の需要と供給により完全に価格が決定されるため、資産の保管手段としては法定通貨よりも価格変動リスクが大きいというデメリットがあります。

しかし、価格変動が大きいというのはトレードにより大きな利益を出しやすいという意味でもあり、メリットにもなり得ます。また、株や為替などの従来の金融商品よりも少額から簡単にトレードを行えるため、ビットコイントレードの世界には未経験者も多くいて、株・為替トレードへの入口にもなっています。

決済手段として用いられる場合には、販売事業者がビットコインを売上として受け取ると価格変動リスクがありますが、第三者のビットコイン決済サービスを利用して日本円へ即座に変換することにより、ビットコイン決済を受け付けながら日本円で売上を受け取ることも可能であり、価格変動に影響を受けることは基本的にありません。

匿名性の問題

匿名性については、「ある」という見方と「ない」という見方の両面で問題とされることがあります。

「ある」と主張するのは、国などの中央機関が中心であり、これは、ビットコインの口座(ウォレット)開設には本名や住所等の個人情報が必要なく、マネーロンダリングなどの違法な送金手段として用いられる可能性が高いというものです。このリスクは、主に規制を行いビットコインと法定通貨の交換所に利用者の本人確認を義務付けることで軽減されると考えられます。

「ない」と主張するのは、利用者側が中心であり、銀行振込などとは違い、ビットコインは全取引履歴が全世界に公開されており、送金に関わっていない人もその情報を自由に閲覧することができるためです。取引毎にアドレスを変えるなどして、同じアドレスを使いまわさないようにすれば、ある程度はプライバシーが保護されるものと考えられます。

法的リスク

ビットコインをはじめとする仮想通貨はP2P型であり、国が管理・コントロールできるようなものではありません。そのため、世界の中にはこれを脅威と感じてビットコインの取引を禁止したり制限を行っている国もあります。規制により分散型仮想通貨を直接根絶することは不可能とはいえ、世界が禁止の方向に動き、堂々と使えないようになれば、ビットコインの大きな利点の一つである「自由」という側面が損なわれ、自然と衰退していく可能性が高いと考えられます。

また、仮想通貨に関する法律はまだまだ未整備であり、今後の法整備の方向等もあいまいな部分が多く、ビットコインへのビジネス参入の障壁の一つにもなっています。

エネルギー消費

ビットコインの取引承認には膨大なエネルギー・電気を使用する計算が必要であり、使用者が多くなればなるほどさらにエネルギーが必要になるという問題もあります。これについて、限られた地球資源・エネルギーを無駄にしているという指摘がありますが、ビットコインの決済システムを維持するうえで必要なコストで、このコストは従来の決済システムよりも大幅に少ないという反論もあります。

取引手数料の上昇

現在は、マイニング時に新たに生成されるビットコインがまだまだ多く、マイナーの報酬は新規発行されたコインが中心ですが、取引手数料が報酬の中心になったときマイニングのインセンティブを維持するため、自然と必要な取引手数料が上がると言われています。しかし、これはあくまで仮説であり、経済的作用はそう単純ではないため、実際にそうなってみないとはっきりわからないとも考えられています。

また、ビットコインのシステムで処理可能な最大取引量に対して、実際に行われる取引が増えていったとき、取引手数料の競争となり、迅速な取引確認に必要な取引手数料が上がってしまう問題もあります。

マイナー・マイニングの集中化

ビットコインのマイニングは、ASICと呼ばれる採掘専用端末が一般的になるなど効率化された専用機器が普及しており、すでに通常のPCでは、ブロックを生成できない状況になっています。また、個人単独でマイニングを行ってもマイニングに成功する確率が低いため、集団でマイニングを行い、成功したときはみんなで報酬を分け合うというプールマイニングが一般的になり、さらに集中化が進んでいます。

もし単一のグループが支配的になったりいくつかのグループが結託したりする場合、そのマイナーにより不正な取引もブロックも取り込まれてしまうというリスク(51%攻撃)があります。51%攻撃により可能なのは二重支払いのみであり、他人のコインを勝手に使用したり、何もないところからコインを生成したりすることはできないため、致命的な問題ではないと主張する人もいますが、大きな問題であることは間違いありません。

フルノードの集中化・減少

フルノードとは、ブロックチェーンすべてをダウンロード・検証し、不正なブロックがないかを監視して、他のノードや通常の利用者にブロックチェーン情報を伝達する役目を持つコンピュータのことです。マイナーもフルノードに含められますが、マイナーとは区別してマイニング(ブロックの生成)は行わずブロックチェーンの検証のみを行うコンピュータのことを指してフルノードという言葉を使うことが一般的です。

ブロックチェーンのブロックを正しいものとして受け入れるかどうかを決めるのは、フルノードでありマイナーだけではないので、例え悪意を持ったマイナーが不正なブロックを生成してもフルノードは拒否することが可能です。しかし、フルノードにはマイナーとは違い、報酬が貰えないためほとんどインセンティブがなく、フルノードとして運用している人は主にネットワークの分散化に協力しようとする人たちによるボランティアであり、減少傾向にあります。

現在は致命的な問題になるほど集中化・減少は進んでいないため、あまり議論にはなっていませんが、もしこの問題が深刻化すれば、マイナーの集中化よりも重大な問題になる可能性があります。

最大取引量の問題(ブロックサイズ問題、スケーラビリティ問題)

現在のビットコインの仕様では、最大に扱える取引量は7tps(取引/秒)であり、段々とこの最大取引量に近づいているという問題があります。これはクレジットカードVISAの平均約2,500tps、ピーク時約4,000tpsに比べて圧倒的に少なく、決済サービスのpaypalの平均約100tpsと比べても非常に少ない値となっています。取引量が容量オーバーとなれば、短期的には前述の取引手数料が上昇したり取引の確認が遅れるような問題が発生し、長期的には予測不可能な事態が発生するとも考えられています。

最大取引量の制限はブロックに現在1MBというサイズ制限があることが要因であり、解決策としては、①単純にブロックのサイズを引き上げる②取引自体のサイズを少なくする③ビットコインのブロックチェーンとは別の階層・レイヤーで取引を実行する、といったものが考えられています。3番目の効果が最も大きいと考えられていますが、完全に新しい技術を導入することになり、すぐに実行するのは困難です。そこで1番目が当面の対策として議論になっています。

一見ブロックサイズを引き上げるのが単純明快にいいように思われますが、サイズを引き上げることにより、ブロックチェーンの容量も増大するため、マイナーやフルノードの負担が増し、さらにマイナー・フルノードの集中化が進むという懸念もあり、この問題はそう単純ではありません。また、取引量が増えるたびにブロックサイズを増加させなければならず、根本的な解決にはならないという指摘もあります。2番目の取引容量を少なくする、というのも根本的な解決策ではなく小さくするといっても限界があるため、実際どれだけ効果があるかは疑問があるといえます。また、後述しますが、ビットコインの仕様変更は気軽に行えるようなものではなく、慎重な決断をしなければならないという問題もあります。

このように、最大取引量の問題は簡単な解決策のない非常に難しい問題で、すぐにでも対策しなければならない状況に直面しているため、ビットコインコミュニティ内でも意見が分かれており、さらに事態をややこしくしています。

コミュニティの合意問題

ビットコインは分散型仮想通貨であり発行主体はないものの、ソフトウェアでもあるので当然開発者がいます。最初の開発者は、現在では失踪してしまったSatoshi Nakamotoと名乗る正体不明の匿名の人物でしたが、ビットコインはオープンソースで誰でも開発に貢献できるので、現在では開発チームの数名が中心となってビットコインの改良を行っています。

また、そのネットワークはマイナーやノードによって運用されており、数名の開発チームが提示したビットコインソフトを数千人以上のノード(マイナー)が運用する、というかたちになっています。現在では、取引所やウォレット等のビットコイン関連サービスを提供する企業も加わって多様なビットコインコミュニティを形成しています。

ここで問題となるのが、ブロックサイズ問題・スケーラビリティ問題のように、ビットコインの仕様変更を迫られるような事態に直面し、コミュニティ内で意見が分かれたときどうするかということです。開発者単独でもマイナー単独でも、ビットコインは成り立ちません。結論としてはなんとかして合意するしかありません。ビットコインはオープンソースで誰でもプログラムコードをコピーできるため、分裂して「別のビットコイン」を作るということも可能ですが、もしそうすればビットコインに対する信頼度が著しく下がり、価値も下がることが考えられるからです。

このコミュニティの問題は、技術的というより社会的・政治的問題になってくるので永遠に解決のできない問題となってしまうかもしれません。

ビットコインの仕様変更による解決

上記のような問題を解決する方法として、まずビットコインの仕様を変更する方法があります。ビットコインの発行上限やハッシュ関数(SHA-256等)は決まっている、というような説明をこれまで行ってきましたが、あくまでソフトウェアなので、その仕様は理論上変更することが可能です(大きな影響を与えるような変更は、コミュニティの合意問題から現実的には起こりにくいといえます)。

この仕様変更の種類を大きく分けるとハードフォーク(hard fork)ソフトフォーク(soft fork)の2つがあります(元々これらはソフトウェア開発の中で使われていた用語ですが、ブロックチェーンが分岐することを「フォーク」する、さらに言えば恒久的な分岐をハードフォーク、一時的な分岐をソフトフォークと言うこともあります。ハードフォークやソフトフォークが行われる時にはブロックチェーンのフォーク,つまり分岐が発生する可能性も高いので混同しないようご注意ください。)

ハードフォーク

ハードフォークの図

ハードフォークは、旧バージョンで有効だったルールを新バージョンで無効とし、旧バージョンで無効だったルールを新バージョンで有効とすることです。例えば、ブロックのサイズ制限を変更する、というのはこのハードフォークにあたります。

ハードフォークの際は、上図のように旧バージョンと新バージョンのビットコインでルールが違うため、完全にブロックチェーンが分岐化して合流することはありません。ハードフォークが行われると旧バージョンを使って行われた取引が、新バージョンでは完全に無効になってしまうという問題があります。ビットコインの利用者が、常に最新情報を確認しているとは限らず、バージョンアップ情報が伝わるのには時間がかかり、短期的にマイナーやノードの極度の集中化が起こる可能性もあるため、この変更は慎重に行わなければいけません。実際に、意図せずブロックチェーンがハードフォーク的な分岐を起こした例を除いては、ビットコインにおいて過去ハードフォークが実行された例はありません。

また、例えば「別のビットコイン」を作るとしてコミュニティが分裂してハードフォークが行われる際にも同様の現象が起こります。バージョンアップ前の残高は一切消失しませんが、バージョンアップ以降の分岐したビットコイン間で残高が共有されないので、どちらのビットコインを使うのかについて全利用者は選択を迫られます。

ソフトフォーク

ソフトフォークの図

ソフトフォークは、新バージョンでルールをより厳しくし、旧バージョンでは有効だったルールを新バージョンでは無効とすることです。

この場合、新バージョンのマイナーが生成したブロックは旧バージョンでも有効なブロックとして判定し、一時的な分岐にしかなりません。これは、ブロックチェーンは最も長いものを有効なブロックチェーンとする、というルールを考えると分かりやすくなります。旧バージョンのマイナーから見ると、旧バージョンのブロックと新バージョンのブロックの両方を有効とするので、結果的にはより長いブロックチェーンを優先することになります。新バージョンのマイナーのほうが多ければ新バージョンのブロックがより長くなるため、結果的に旧バージョンのマイナーも旧バージョンのブロックを無効と判定し、新バージョンのブロックチェーンに移れるというわけです。

このような仕様変更の場合は大きな影響はないと考えられるため、実際に過去にも何回か実施されています。

ビットコインの拡張と仮想通貨の広がり

ビットコインのブロックチェーンの仕様自体を変更するのでなく、新しい技術をビットコインに適用し、問題解決を図ろうとする動きもあります。また、一から仕様を決定し、ビットコインを改良した新しい仮想通貨を作るという人々も現れており、これらの動きは、アルトコインビットコイン2.0と呼ばれています。

特にビットコイン2.0では、単なる問題解決に終わらず、通貨だけではなく契約や取引自体の保存・移転をブロックチェーン上で行うような応用が進んでおり、ブロックチェーンの応用の第1号であるビットコインをはじめとして、仮想通貨は将来どんどん広がっていくことになると思われます。

最終更新日: 2016年12月15日

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